コレクション: 鈴木 蔵

1934年、岐阜県土岐市に生まれた鈴木藏は、日本を代表する美濃陶芸の巨匠であり、「志野」の分野で二人目の人間国宝に認定された陶芸家です。父が勤務していた多治見市市之倉の窯で助手を務めたことをきっかけに陶芸の道へ進み、1966年、31歳で独立しました。従来は薪窯でしか表現できないとされていた志野を、ガス窯での制作に挑戦したことで注目を集め、伝統を重んじながらも独自の創造性を確立しました。

「志野には日本人独特の美意識が宿る」と語る鈴木は、常に「新しく力強いもの」を追い求めてきました。その作品は白土と長石釉が織りなす柔らかな風合いに、自然への畏敬と現代的な感覚が調和し、志野焼の新たな魅力を切り拓いています。

1959年に現代陶芸展で佳作を受賞して以来、日本陶磁協会賞、芸術選奨文部大臣賞、中日文化賞など数々の栄誉に輝きました。1994年には重要無形文化財「志野」保持者に認定され、翌年には紫綬褒章を受章。国内外で個展を重ね、1998年のパリ個展をはじめ国際的にも高い評価を得ています。

令和6年度には文化功労者として顕彰され、その功績が改めて讃えられました。志野の伝統を受け継ぎつつ革新を続ける鈴木藏の作品は、今もなお多くの人々を魅了し続けています。