コレクション: 西岡小十

1917年、佐賀県唐津市に生まれた西岡小十は、戦後から20年余にわたり古唐津の窯跡発掘に携わり、出土した陶片の美しさに心を奪われました。やがて「古唐津を現代に甦らせたい」という強い思いを抱き、1960年代に文化財調査官であった小山冨士夫と出会ったことを契機に、52歳で本格的に作陶の道へ進みます。

1971年には可児市に割竹式登窯を築き「小次郎窯」と命名、後に荒川豊藏の助言により「小十窯」と改めました。絵斑唐津(えまだらからつ)や梅花皮(かいらぎ)といった古唐津の代表的技法を次々と復元。その功績から「古唐津の神様」とも呼ばれている。

小十が生涯で唯一師と仰いだのは小山冨士夫であり、その進言に従い、名誉や肩書にとらわれることなく純粋に唐津焼の美を追求しました。また、人間国宝の荒川豊藏や藤原啓とも深い交流を持ち、古唐津の再興に心血を注ぎ続けました。

彼の作品は、桃山期の古典を忠実に再現するだけでなく、現代に生きる力強さと品格を備えています。絵斑唐津のやわらかな景色や梅花皮の荒々しい表情は、自然と土の息吹を伝えるものであり、今なお多くの人々を魅了し続けています。

西岡小十は2006年に90歳でその生涯を閉じましたが、「古唐津の神様」と称されたその情熱と技は、今も唐津焼に息づいています。