コレクション: 富本憲吉

日本近代陶芸の礎を築いた巨匠のひとりです。
東京美術学校図案科で学んだ後、イギリスへ渡り、ウィリアム・モリスの思想やホイッスラーの芸術観に触れたことで、後の作陶に通じる独自の美意識を育みました。帰国後はバーナード・リーチらとの交流を通じて陶芸に本格的に取り組み、やがて柳宗悦や河井寛次郎、浜田庄司と共に民藝運動にも加わりました。

富本は「模様から模様をつくらず」という信念を生涯にわたり貫き、自然の観察から得た写生をもとにした独自の意匠を作品に落とし込みました。竹林や花々、雨の風景など、身近な題材を自らの感性で昇華させた文様は、詩情あふれる装飾として白磁や染付、色絵磁器に展開されました。晩年には金銀彩を加え、格調高く華麗な作風を確立しています。

1944年には東京美術学校教授、戦後は京都市立美術大学教授として後進の育成にも尽力。1955年には「色絵磁器」で第一回の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、1961年には文化勲章を受章しました。1963年に77歳で没する際には「墓は不要、作品こそ我が墓」と遺し、芸術に生きた人生を象徴しました。

富本憲吉の作品は、伝統と革新を融合させた唯一無二の存在として、今もなお日本陶芸の頂点に位置づけられています。