コレクション: 藤本能道

1919年、東京に生まれた藤本能道は、色絵磁器の分野で新境地を開いた陶芸家です。東京美術学校工芸図案部で学んだのち、文部省技術講習所に進み、加藤土師萌の指導を受けました。さらに富本憲吉の助手を務めた経験が、のちに自身の代表的技法となる色絵表現の礎となりました。

戦後は輸出陶器のデザインや指導の仕事に携わりながらも独自の研究を重ね、1968年には「磁器色絵花瓶」で光風工芸賞を受賞。1970年からは東京藝術大学で教鞭を執り、1985年には学長に就任するなど、教育者としても後進の育成に力を尽くしました。

藤本が確立した「釉描加彩(ゆうびょうかさい)」は、本焼き前に色釉で直接絵付けを施す手法であり、これまでの色絵磁器に新たな表情を与えるものでした。日本画の没骨描法を取り入れた絵画的な表現は、花や鳥を自在に描き出し、線を用いない柔らかな色彩のにじみや重なりが独特の魅力を放ちます。細部に至るまで精緻に描かれた文様は、まるで絵画のような躍動感を備えています。

こうした功績により、1986年に重要無形文化財「色絵磁器」保持者(人間国宝)に認定。華やかでありながら品格を漂わせる藤本能道の作品は、色彩の美と繊細な感性を映し出すものとして、今も多くの人々を魅了し続けています。